離さない



「わぁっ。れれれ、恋次!お前、今どこを触った!?」
「どこって…ここ?」
「ひゃっ!」

悲鳴をあげるルキアの反応が面白い。胸を隠して蹲る、その仕草がかわいい。胸をガードして、それ以外は無防備になった体を簡単に押し倒すと、俺はその首筋に顔埋める。

「莫迦者っ!止めろっ!」

涙目になって俺の顔を押しかえすルキア。
もう、めちゃくちゃ可愛くて、にやけてしまいそうになるのを必死で我慢しながら、俺はわざと不機嫌な表情を作ってみせる。

「無理」
「きゃあ!莫迦、舐めるな!!」
「んだよ。あんまでけー声出すなって」

渋々といった体でルキアの上からどいてやれば、脱兎の勢いで俺から遠ざかろうとする。それを腕一本で引き寄せ、ぎゅうと後ろから羽交い絞めにしてやる。 その瞬間、ルキアが体をグ・と硬直させた。その旋毛にキスを一つ贈ると、ふにゃと体から力が抜ける。

ああ、もう、面白すぎる。

「………あんまり無防備にしてっと、このまま、また押し倒すぞ?」
「!!」

再び逃げようとするルキア。
それを易々と封じて、もう一度、ルキアの首筋に顔を埋めるとベロリと舐める。ビクンと反応して、俺の舌から逃れようとルキアが頭を右前方に傾けた。 それと同時に少し離れた耳を、ルキアの首筋から唇を離すことなく追っていって捕える。中を少しだけかき乱すと、再びルキアの体から力が抜けた。

ニィと笑うのを止められない。

「ふぅん。首と耳、弱いみてーだな」
「ううううう、煩いっ!いい加減、この腕を解かぬか。恋次っ!!」
「…わーったよ」

ルキアの声が少し涙まじりになっているの感じて、悪ふざけもここまでか。と、一度ルキアの体をギュウと抱きしめてから解放する。 素早い動きで俺から一定の距離をとったルキアは、やっぱり涙目になっていて、真っ赤な顔のまま俺をキッと睨みつけた。

「貴様っ!一昨日から急に何だというのだ!?」

一昨日。

ルキアから好きだと言われて、キスして、好きだと長年の想いを告げた日。あの後、ぶっ倒れたルキアを抱えて頭を整理する事、一時。目が覚めたルキアを殆ど無言のまま送っていって、いつもの木の下まで来た所でもう一度、今度は 俺から告白して、きちんと恋人同士になった日。

その場をその日3度目のキスだけで止められたのは、長年培った自制心のお陰だ。

「別にふつーだろ?恋人同士なら」
「普通なものかっ!なんというか…もっと、段階というものがあるだろう………」

その段階を知らない奴が何を言う。

机を盾にしているルキアをもう少ししたら、また捕まえにいこうと、寂しくなった腕に誓って俺は答える。

「段階っつーと。何だ?会話する?手をつなぐ?デートする?抱き合う?接吻?」

どれ?

接吻以外は恋人になる前にすべて終っている。それすらも恋人になってからは、隙あらば奪ってるしな。

言葉に詰まったルキアは「しかしだな…」と何とか反論を試みようとしている。俺はそれを思いつかせる間を与えずに、再びルキアを捕える。 握った手はこれでもかと過剰に反応して、表情は引きつり気味。パニック寸前といったところだろうか。

「あー、悪かった。ごめんなさい。今日はこれ以上、何もしねーから」

手を離して、頭をポンポンと軽く撫でればようやくルキアが安心した表情を見せた。

「本当だろうな?」
「ああ。だから、こっち来い」

少し躊躇って、おずおずとルキアが近寄る。
その体をまた抱きしめたまま、手近な椅子に腰掛けた。

「…何もしないといったくせに」
「してねーだろ?さっき以上の事は。…嫌なら離すぜ?」

胸の中でフルフルと頭を振って、ルキアがそっと背に腕を回してきた。昨日よりも、少しだけ進歩。

ルキアの言っている意味が分からない訳じゃない。多分、ルキアが俺を男だと自覚したのはここ最近の事で、その意識レベルはまだまだ低い。 手を繋いだり、軽い口付けでも満足できるのだろう。

しかし、長年ルキアを女として見ていると自覚してきた俺はそんなものじゃ満足できない。

ルキアに触れたい。
触れたくて、触れたくて、仕方がない。ルキアの体に、心に、俺を刻み付けて、片時も頭から離れないようにしてやりたい。 滅茶苦茶に抱いて、俺に依存させて、俺なしでは生きていけないようにしてやりたい。その口から漏れる言葉が俺の名前だけにしてやりたい。

可愛くて、愛おしくて。

『俺だけのものに』

そうしてもいいなどと本気で思っているわけではないけど、その想いを伝えていい権利は得たと思っている。受け入れなくていいから、聞いて欲しい。

いや、やっぱり聞くだけでなく、受け入れて欲しい。千分の一でいいから。

「ルキア」
「ん?」

俺の腕の中にいるだけで、微笑っている。
そんなのに満足しないで、もっと俺を求めて欲しい。
俺はいつでものルキアにすべてを懸けれるのだから。

「俺の事好きか?」
「でなければ、こんな事を許すと思うか?」
「そりゃ…、そうだけどよ」
「心配するな。何度でもいってやろう」

背から、首に移動する腕。
慣れない、ぎこちない、戸惑いながらのキス。
それに免じて、今日のところは我慢してやる。
聞きたい言葉も聞けたことだし。

「好きだよ、恋次」





こんの、バカップル!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
覚悟が足りませんでした。想像以上、予想以上だ、いちゃいちゃを書く恥ずかしさは。
割と短め(ぜろわんにしては)なのに、えらい時間がかかったー。
我慢してきた恋次にプレゼントのつもりだったのに、やっぱり我慢しなきゃいけない恋次。
もうちょっと待ってて、そのうち食わせてあげるから(問題発言)
残すところ、あと一つだ〜。
[18.6.4]