膝枕
「えぇと、大丈夫か?」
「…腰が痛い」
ズキズキと痛む箇所を庇いながら、ゆっくりと顔を上げると心配そうな顔をする恋次と出会う。
どうしていいか分からない。
それが丸分かりの表情が可笑しい。笑うと腰に響くが、どうしても堪えることができなくて、私は体を丸めて笑う。何もつけていない体にかけられた布が、くしゃりとその表情を歪めた。
「…何が可笑しいんだよ」
いつもの憮然とした表情。気恥ずかしくて、どういう顔をしたものかと思っていたのだが、普通でいいのかと安心する。
「いや、何。お前も私とあまり大差ないな・と思ったんだ」
初めての事に。
初めての気持ち。
初めての快感。
家族。という恋次との関係に、恋人がプラスされてから1ヶ月。初めてだらけで、恋次に振り回されてばかりのようだったけれど、多分、恋次も必死だったんだろう。
私と一緒で。
相変わらず、痩せ我慢が得意なやつだ。
いつか禿げるやもしれぬな。
「ちっ。何がだ?…まぁ、いい。何かして欲しい事はねぇか?」
「うん?そうだな」
サラリと髪を撫でた指の感触が幸せ。
恋次の気遣う気持ちが幸せ。
今ばかりは思い切り甘えて、噛み締めるとするか。
「風呂に入りたいかな。…後、布団はどうにかしないと檜佐木先輩に悪いだろうな」
「分かった。ちょっと待ってろ」
恋次の指が離れていく。
代わりに一度、額に唇が触れて、支えを失った布がパタンと厚みを失った。
(広い)
広くて大きな背が私の目に映る。
逞しい体だ。
戌吊の頃よりも数段、鍛えられた体。日々、絶え間ない努力をしているのだろう。口では「だるい」だの「面倒だ」だの言いながら、少しも努力を惜しまないのは昔からだ。
変わらない恋次も。
変わった恋次も。
どちらも愛おしいと思う。
手早く身につけられていく白い夜着が、恋次を隠してしまうようで、少し悔しい。
さっきまで、あの肌に触れていたのは私だったのに。
「…何を考えているのは、私は」
着物に嫉妬するだなんて。
「あ?何か言ったか?」
「い…いいや、何も!」
くるりと布に包まって恋次からの視線を回避する。
こんな事、馬鹿馬鹿しすぎて言えやしない。
「じゃ、ちょっと移動するぞ」
フワリと布に包まったまま、新たに敷かれた布団へと抱きかかえられる。衝撃が少ないようにと注意を払っているのだろう。いつになく優しく抱きかかえられた体がむず痒い。布に包まってしまったため、恋次の表情を見ることが出来ないのが残念だ。
「大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ」
恋次の優しさに包まれる充足感。
もっともっと欲しい。
「風呂の支度してくる」
もう一度額に触れた唇。
それに、どうして私の唇に触れてはくれないのかと瞳で問う。
遠ざかっていく足音にため息。
ズキと再び痛んだ腰が、何だか嬉しかった。
「またか…」
ついこの間も悩んだような気がする。
変だ、おかしいと。
自分の感情についていけない。
恋次に触れられる喜びと共に、狂うように独占欲も育っていく。
手に入れた赤い実は、黒く変色していないだろうか?
やっぱりリボンで飾りつけようか。
こんな気持ちを恋次に見せて、離れいかれたら。
私はどうなってしまうのだろう。
怖い。
恋次に抱かれていた間には微塵も感じなかった気持ちが、恋次に触れていられなくなった瞬間から襲いだす。ズキと痛む恋次の痕だけが、それを和らげた。
好きで。
好きで。
狂ってしまいそうだよ、恋次。
早く戻ってきて。
大きくなる足音に必死で祈る。
「もう少しで支度できる…どうした?そんなに痛ぇのか?」
「いいや、違う。なぁ、恋次。もう一度、抱いてはくれないか?」
頬を伝う涙を拭いもせずに、痛む腰を我慢して、体を起き上がらす。
驚いた表情の恋次が見下ろしている。
困惑が見て取れた。
呆れているだろうか。
心の奥に潜んでいた醜い独占欲を見抜かれただろうか。
「馬鹿。辛そうな顔して何言ってやがる」
思ったよりも優しい声がふる。
側に座った恋次が私の手をとった。
大きな手がキュッと私の手を包む。
「嫌か?」
「違う。嫌な訳ねぇだろう。ああ、もう、そんな目で見るんじゃねぇよ!」
バフと無理やり頭を足の上にのせられた。
筋肉のついた足は決して乗せ心地のよい枕のような感触ではなかったけれど、とても安心できる。安らげる。
「滅茶苦茶に抱きたいんだから、あんま挑発すんな。てめーの体に負担かけるのは本意じゃねぇ」
頭の上に置かれた手のひらに、どこまでも心地よさを感じて。
何を不安になっていたんだろうと思う。
さっきあれほど、恋次の気持ちを感じたのに。
しかし、同時に離れてしまえば、また不安になるのだろうと確信する。
恋次が望むとおり、無茶苦茶に抱いてくれれば、その不安は消えてなくなるかもしれないのに。
「そうか…。変な事を言ってすまなかった。ありがとう」
だけど、今は幸せだ。
幸福だ。
恋次が好きだ。
「………どういたしまして」
ちょっと残念そうな恋次の声に、やっぱり最初に思ったとおりに今は思い切り甘えようと、頭に置かれた手のひらに指を絡めた。
檜佐木がなぜか家持ちだという設定はこのために作られたのです。分かる方がいらっしゃるか謎ですが。
…という事で、恋ルキお題終了!お付き合い頂きありがとうございましたっ♪
だけでは許していただけないでしょうね、やっぱり。
なんと言いますか、言い訳出来ないんでないんですけどね。ついに…
事後!!!
まだまだ未発達だったルキアに、こうもっと恋次に執着持って欲しいなーと思って書き続けたお題。
というか、ぶっちゃけ、やってる恋ルキを書きたかったお題。
だって、らぶらぶですよ?
いちゃいちゃさせていいんですよ?
そりゃ、ねんごろな二人を書かなきゃ嘘でしょう!!!
え?書いてないじゃないかって??
いや、書きましたとも。楽しく!でも「かぞえ唄」はRー15。R−15なんです。
越えちゃいけない壁がある!!!!!!(多分)
けっして、皆様の反応が恐ろしくてのっけなかったとういう分けでは有りませんヨ?