甘味所



「で、どうなのよ?」
「で、どうなんだよ?」

お願いだからそんな怖い目で俺を見ないでください。とは言えずに、1歩だけ下がってから答えた。

「そんなの知りませんよ。二人に直接聞けばいいじゃないですか…」

それは至極正直な気持ちで。この話題には必ずと言っていいほどまずこう返している。この数年で何回言ったかもう数え切れないほどだ。だけど、今までこの返事で納得してもらえた試しはない。何故、そう思うかと言うとその後には必ずこう返ってくるから。

「それが出来れば苦労しないわよ!」
「それが出来れば苦労してないっつの!」

はぁ、やっぱり…。

現在、俺こと理吉は居酒屋にいる。今日は隊長達を除く席官だけの飲み会で、さすがに隊舎を空っぽには出来ないから全員出席とはいわないまでもかなりの人数が集まっていた。数か月に一度、定期的に開かれるこの飲み会は職場では言えない意見が飛び交い。まぁ、何となく有意義ではあるんじゃないかと俺は考えている。それを席官だけに留めておく必要性は分からないけれど皆、六番隊を代表する責任を負っている者達ばかりだし、あまり大人数いても仕方がないのは事実。意外と妥当な所なのかもしれない。

だけど、うちは隊長自らが平隊員の相談ごとにのっちゃうような隊である。割と普段から意見の交換はされており、小一時間も話せば仕事の話は大抵終了してしまう。そうなれば残りの時間はプライベートな話に向かうわけで、酒もまわってきたこの時間帯。話の流れは当然のように隊長と副隊長の関係へと流れ込んだ。

「ねぇ、理吉。君はあの二人と親しいじゃない?何か知ってるでしょ」

そう言いながら近づいてきたのは第五席の山王桜子さん。小麦色の肌に薄い桜色の短髪。六番隊の中で隊長と張るくらい派手な容姿は持つ彼女は強烈な恋次さんのファン…ではなくルキアさんのファンだ。何でもかなり前に同じ討伐隊で組んだことあるとかで、その時は朽木の七光だと思って嫌っていたそうだけど予想を遙かに上回る実力と、冷たくあたった山王さんが負傷した時に見事な手際で治癒してもらってから一気に見る目が変わったとか。何でも、彼女曰く。ルキアさんは戦場の妖精さんらしい…。

「いい加減吐け。理吉」

そう言って反対側から近づいてくるのは第四席の鹿芽沙羅久さん。良い出自を持ち見目も良く口もまわる彼は結構女性に人気がある。そんな彼は熱烈なルキアさんファン…ではなく恋次さんファンだ。こちらもやはり、当初は野蛮な琉魂街出の隊長なんて真っ平だと毛嫌いしていたらしい。だけど、絶対に貴族のほうが優れていると思っていた霊力は欠片も及ばないし、剣技にいたっては話にもならなかった。そういう力の意味ではルキアさんも同じように尊敬はしているらしいけれど、男は強い男に憧れるものらしい。(その辺はちょっと俺にもわかる)彼は戦いを駆ける恋次さんをこう称す。戦場の赤鬼と…。

「だぁから、俺は知りませんって!確かにお二人が隊長、副隊長になられる前から親しくさせて頂いてますけど。話す事は殆ど仕事の事ですし…。大体、鹿芽さん。山王さん。隊長と副隊長が恋人同士っだったらどうだって言うんですか?二人とも、隊長や副隊長の恋人になりたいっていうのとは違うんでしょう?」

それについては間違いないと思う。だって、二人ともそれぞれ彼氏彼女いる筈だから。というか、何で俺はこの二人に敬語を使ってるんだろう。この二人は何で俺にため口なんだろう。俺の方が二人よりも席次上…だったような気がするんだけど。

その疑問をぶつける前に二人は揃ってグラスを置き、一呼吸置いた。

「「不満」」
「はい?」
「だってよー。恋人同士だぜ?こ。い。び。と。朽木副隊長って確かに綺麗な顔はしてるけどよ、見かけ女っつーより少女だろ。アレ。阿散井隊長の体格で朽木副隊長に満足出来るわけがねぇよ」
「ちょっと朽木副隊長をそんな邪な目で見るのはやめてくれる?それよりも阿散井隊長の見かけのほうが問題でしょ。あんな派手派手しいの副隊長の隣に似合わない」
「ばーか。あの目立つ感じと精悍な姿が隊長のカッコイイところだろうが。やっぱりああいう男の隣には、こーグラマーな女が2・3人いるのが似合うだろ」
「あんたこそ馬鹿じゃないの。あの隊長に女を2・3人も囲える度量があるわけないじゃない。それを言うなら副隊長の周りに美青年を2・3人おいたほうが…」
「それこそ無理だろ」
「そうね。うちの隊長達はそういうの鈍すぎるものね」
「だからよ、理吉」
「どうなのよ?第三者から見たあの二人は」

はい、振り出しね。
さて。今度はどう答えようかと頭を悩ませる。何だかんだ言って二人とも恋次さん。ルキアさんのことが好きなのだろうし。この二人以外にも密かに耳を澄ませている別隊員や別口で聞きにくる人たちもきっと同じことなんだろう。皆、大きな噂を纏っても何てない顔してる二人の事が気になって仕方ないのだ。それにしても。妖精や赤鬼はないと思うけれど…。この話を恋次さん達の耳に入れたらどんな顔をするだろう。きっとすっごく嫌な顔するに違いないと楽しみにしつつ、俺は俺に言える一つだけの回答を述べた。

「あの二人はたまに合う休日には必ず甘味処巡りに行く仲ですよ」





甘味処、に出没

未来設定ちょっと楽しいかも。なちゅらる仲良し恋ルキに振り回される周囲。
[19.5.16]