喧嘩のあと
「っ!こんの単細胞っ!!何度言ったら分かるのだ、無暗やたらに突っ込むなといつもいつも言っておるだろう!貴様の無駄に派手なその頭には学習能力というものがついておらぬのかっ!?チームワークというものがあるのだぞ、たわけっ!!!」
「うるせぇよ!一番強ぇやつが数減らした方が早いし被害も少ねぇし一石二鳥だろうが!!そんなもんに頼ってばっかだといざって時に体が動かなくなっちまうんだよっ!臨機応変に対処する能力の方が生き残るためにはそっちのほうが大切だろう、馬鹿野郎!!」
喧々囂々。…たった二人だけど、そんな言葉がピッタリな室内の様子に障子に手をかけた所で理吉はため息を吐いた。隊長が大変だと真っ青な顔でやってきた平隊員の言うことなんて真に受けるんじゃなかったと後悔する。いや、実際に大変だったのだろうけど今日で副隊長も帰ってくる予定だったのを失念していた。慌てて持ってきた救急箱は無駄になった。結構重いのにこれ。あ、四番隊への出動要請は早く取り消してもらわないと。
「失礼します」
何だ。という男の怒号と、入れ。という女の怒号が身を打つ前に障子を開ける。こちらを見向きもせずにまだにらみ合っている二人にこっそり溜息をついてから一礼した。
「虚討伐緊急要請への対応お疲れ様でした阿散井隊長。ルキア副隊長は三週間もの実地訓練識お疲れ様です。…すいません、ちょっと連絡させて下さい」
どうせほとんど聞こえていないだろうから形ばかりの挨拶をすませて二人の隣をすり抜ける。予想通り二人はおう。とか、うむ。と短い返事だけを寄こして、さっさと喧嘩を再開させた。その煩さに耳を塞いで暗記しているダイヤルを回すと聞きなれた声が返ってくる。何とか要件を伝えようと思うが、どうやらバックサウンドが大きすぎるらしく向こうの当惑が伝り。しかたなく配線を出来うる限り引っ張って隣の給湯室へと逃げ込むと何とか互いの声が聞こえるくらいの静けさは得られた。
「あ、どうもすいません。花太郎さん、僕です。理吉です」
「あ、理吉さんでしたか〜。こんにちわ」
電話線の向こうから間延びした声が響く。花太郎さんが四番隊の第五席へと昇格してもう2年たつ。いつまでたっても変わらない様子に、自分が思っているよりも時は流れていないのかもしれないと再びヒートアップしてきた喧嘩を聞きながら思った。
「すいません。煩くて」
「いえいえ〜。てことは、阿散井隊長への手配は取り消しですね〜」
「ご迷惑をおかけします」
「ルキアさんがいるなら、僕らがいってもすることありませんから」
それから2・3言。たわいもない事を言ってお大事に〜という言葉で電話は終わった。だけど、こちらの用事は終わっても隣の部屋の喧嘩は収まっておらず。それは喧嘩というにはあまりに低レベルな子供の言い争いへと変化していく最中で、思わず頭を抱える。なまじ二人の職務中の姿を知っているから尚更だ。
「恋次さん」
阿散井恋次。六番隊副隊長を務めた後、崩玉に関する虚圏での活躍が評価され隊長に昇格就任。それ以来、実績に裏付けされた戦闘力と大らかなその人柄で部下からの信頼も厚く、又隊長となってからも鍛錬を怠らず未だ力は伸び続けているため、以前として将来を有望視される若手隊長。
「ルキアさん」
朽木ルキア。平隊員でありながら崩玉に関する虚圏での活躍により副隊長へと大抜擢された異例の昇進。就任直後は色々と陰で囁かれることもあったが、副隊長の座に相応しい実力を発揮し今やその力を疑うものはいない。前六番隊隊長を思わせる冷静な判断力で熱血方の隊長をサポート。
「咽がかわきませんか?お茶が入りましたよ」
そう言ってテーブルの上に湯のみを置いた。前の隊長がとんでもない舌の持ち主だったためお茶の淹れ方には自信がある。事実、派手な昇り竜の湯飲みからも。やけにファンシーなウサギの顔がプリントされた湯飲みからも美味しそうな湯気がたっていて、ここ最近では一番の出来だと思う。香りもいい。
喧嘩していた二人はそれを見るとピタリと止まると互いに見合わせ、それからゆっくりとソファについた。
「お茶受けは甘いものにしますか?」
と尋ねると二人揃って頷く。
その仕草がやけに幼くてついつい苦笑してしまう。すると二人そろって何だと眉を寄せた、慌てて誤魔化しながら給湯室へとひっこむ。任務から帰る早々お茶一杯で納まる大喧嘩。これで名パートナーとしての評判か数年間のうちに一度も落ちたことがないというから不思議である。
「で。どうだったんですか?今回の任務」
三人で茶菓子を摘みながらそれぞれの空白の時間を埋める。恋次さんは虚討伐の話。ルキアさんは実地訓練の成果。俺はその間に隊で持ち上げられた問題等。
落ち着いて二人の話を聞いてみたら恋次さんの所へ要請があった虚討伐地帯は、ルキアさんが指示していた実施訓練の近くでもあったらしく、ルキアさんの所にも連絡がとんでいたそうだ。訓練の成果を試すいい機会だと思ったルキアさんは数人の新米死神を連れ、現地に赴いたけど報告にあったよりも虚が多く一人の新米死神を庇って負傷したらしい。そこへ援軍が到着したとあって策を組み立てなおし再び討伐に向かおうとした所、恋次さんが俺一人でいいと言って飛び出していったらしい。
…大体読めてきたというか、毎回同じ事でよく飽きもせずというか。内心のため息を押し殺して僕は一口お茶をすする。うん、やっぱり美味しい。
「勝手だと思わぬか理吉殿。それで大怪我して帰ってくるのだから、治癒するこちらの身にもなって欲しいものだと思うであろう」
「ルキアになんか同意すんなよ理吉。調子にのるに決まってるんだから」
恋次さんはルキアさんに怪我した体で前線に立って欲しくなくて。ルキアさんは恋次さんに一人で無理して欲しくなくい。それだけの喧嘩。それならそう言えばいいのにと思うけれど言えないのが二人なんだろう。さて、どうしようかな。この前はルキアさんに味方したから………。あ、でも恋次さんの死魄装かなりボロボロだ。うちルキアさん以外に治癒鬼道使える人いないのに。また無理されても困るなぁ。
などと考えているうちに、先ほどとは違った感じで又口喧嘩を始めてしまったので。僕はその隙に最後の饅頭を食べた。
喧嘩のあと、はまた喧嘩
ここまでやればパロか?などと疑問を抱きつつ現在のBLEACH時間軸ではあまりに満たされないため捏造。
理吉がおっちょこちょいからちゃっかり者へと成長して、喧嘩ばっかりしてる隊長・副隊長を纏める三席だと楽しいなと思いました。