夕暮れ時



穏やかに緩やかに。
雨のち晴。


「今日はどうする?」
「んー。さっき白玉を食べたばかりで腹も空いておらぬし、このまま帰るよ」
「送る」

隊長、副隊長の休みが重なるのは珍しい。今日はその珍しい半日が重なった日で、私が休日。恋次が夜番から明けで午後が休み。休みがあう日は外へ出かける事が多いけれど今日は生憎の雨で。二人で甘いものを食べながら本を読んだり、次の休みはどこへ行くか相談しながら楽しんだ。

いつの間にか雨が上がっていて、窓から覗く空は綺麗な茜色。私は水のついた手をエプロンでふき取り、それを外して洗濯物の一番上に重ねた。こうしておけば、次に使う時は綺麗になって、箪笥の上から2番目右端に収まっている。

「傘忘れんなよ」
「持って帰るのが面倒だな…。そうだ、まだこの部屋には私の傘は無い。置いていこう」
「…誰が干さなきゃいけねぇと思ってんだ?」

そう言いつつも傘を持たない私が戸の外へ出たら恋次は戸を閉めた。それを認可の証と受け止めて私が空の手を差し出すと、大きな手が包んで。クイと優しくひく。

「どの道を通るのだ?」
「河原のほうに行こうぜ。夕日が綺麗だし」
「一番遠回りだな」
「なんだよ。嫌なのか?」

まさか。と言わずに手をギュと握って笑顔を作る。大きな手が伸びてきて私の頭をくしゃりと撫でるから、口を尖らせて文句を言ってやる。調子にのって更に髪をぐしゃぐしゃにした奴に向かって一言。ちょっとムッとした顔を作って、生意気などと言うから手櫛で髪を直してデカイ図体に軽くローキック。

「こけたらてめぇも道連れだぞ」
「その前に手を離せばいいだろう?」
「やだね」
「そうか。では仕方ない。一緒に転んだ後に散々文句を言うことにするよ」

夕焼けに染まる川は綺麗で。足早に通り過ぎてしまうのは勿体ないと主張したが、暗くなってしまうという反論に負けた。下ろしたままの紅い髪が赤く染まって、綺麗だと呟く。照れたような苦笑と共にまた手が伸びてきた。

「お前が褒めるのは髪ばっかだ」
「貴様は私の事を褒めなさすぎる」
「だから、いつまでもこんなうっとおしく伸ばしてなきゃいけなくなった」
「おかげで貴様の悪趣味に染まることはないがな」

何も言わないかわりに優しく恋次の手が私の髪をなでる。
私は幾度だって口にする。
いつもは長すぎると思う白い塀が、短く感じてしまうのはこの時だけだ。

「それじゃな。気をつけて帰れよ」
「目と鼻の先に門があるぞ?」
「そっから先が長ぇじゃないか、てめぇん家は」
「まぁな」

沈黙。
何かないかと思うけれど、何も言う言葉が見つからなくて。ずっとこうやって手をつないで立っていたいけれど私の気持などは無視して夕日は沈んで、明日は朝日がくる。明日も会えるのにな。

「恋次」
「ん」

僅かな時間だけ惜しんで、赤い髪を引くと恋次がかがんでくれる。私は背伸びをする。軽く触れ合わせた唇から、この気持ちが伝染しやしないかといつも期待するけれど恋次はまた頭を撫でて帰って行く。仕方がないので私は恋次が触れた部分に触れて、門をくぐった。





『また明日』





夕暮れ時、おててつないで

ほのぼの終了☆お疲れ様でしたー!
全部ほのぼので書いたつもりです。起伏のない話は意外と難しい、たんたんとした感じになっちゃったかもしれないよー(涙)でも、終わって一安心です。このお題始めてから一週間は頭の中を占めていたのは恋ルキばかり、楽しかったなぁ!
[19.5.19]