涙の味を教えようか。
「泣くなよ」
そう言って、困った顔をして、ぶっきらぼうに、優しく手を引いてくれるから。
だから、私はもっと泣きたくなって困るのだ。
それで、もっと貴様は困った顔になって、ぎこちなく頭を撫でてくれる。
それに耐えられなくなって、ついに私は貴様の胸に飛び込んで、力の限り抱きしめる。
この場にいるのを確かめる。
そばにいるのだと、どこにもいかないのだと、安心する。
「頼むから、泣くな」
そう言って、背を撫でる手はどこまでも暖かくて、どうしても泣けと言ってるとしか思えない。
少し早い鼓動が何よりも愛しくて、ますます涙が溢れる。
「泣くなっ」
背を撫でていた手に力が入ると、ぎゅっと抱きしめられた。
ポタポタと暖かい雫が髪に落ちる。
どれくらいの間そうしていただろうか。
離されることのなかった腕の中で私は願い、誓う。
「…強くなろう」
「………ああ」
「この手から、もう何も零れることがないように強くなろう」
「ああ」
「大切なものを護れるように」
「ああ…。強く、なろう」
永遠なんて約束できない。死はいつかは訪れる。別れはいつも突然で、容赦がない。
でも、これだけは約束しよう。
生きるのを止めたりはしない。
朝日に照らされて目を覚ますと、見慣れた顔がすぐ傍で寝息をたてていた。
あのまま泣きつかれて寝てしまったようだ。
腕から抜け出して、小屋の隅を見ると、藁を編んだ物が目に入った。不自然に膨らんでいて、下に何かがあるのだとわかる。
「っ!」
再び溢れてきた涙を押し留めるため、己の手に爪をたてた。白い肌の上にジワリと赤が広がる。
「強く…なるっ」
しかし意に反して、所々腐り落ちた床の上には円形のシミがいくつもできていく。
それを認めたくなくて必死で手で押し留めるようとする。
頬をつたって唇に触れた赤い涙はツンと鼻をつく鉄の味。
「今だけ、今だけだ」
消え入るような声でそういうのが精一杯だった。
血の味だといいたいわけではありません。
迷いとか、揺れとか、弱さとか、そういうのの象徴っぽく。ヘタくそな文章からは伝わらないでしょうが…(涙)
仲間の最後の一人が死んだ日ってことで。