蒼空に向けた、愛の言葉。
茜色と空色。どちらを選ぶのかと聞かれて、迷わず手に取ったのは茜色。この行動を意味するところはあやつには分かっただろう。だけど、それはそんなに難しいことではなかった。肝心でないところでは、こんなにも容易く意思表示できるのに。と、溜息が出る。
私は素直ではない。そんな事は随分と前から承知しているし、この性格故に失敗した事が少なくないのも分かってはいる。分かってはいるのに改善し難いのが性格というもので、自分が悪いとは思っていながらも突かれるとつい反論してしまい、謝るタイミングというものを逃す。素直ではないを通り越し、すでに天の邪鬼だと自嘲して紅の空を見上げた。
もうすぐ夜の帳が下りてくるであろう空の向こう側に、星が優しく瞬いているのが見える。一つ一つは強くない光が、どこまでも連なって地を見下ろすと、どうしてあんなにも力強いものへと変化するのか不思議だった。恐ろしい闇夜を深い眠りの腕に変える星に例えられた自分は、少しでも星に近い人でありたいと思うのに、現実との差が酷くもどかしい。
「どうしたらよいのか…な」
(どうしようかな)
「何度目だったか」
(数えられないくらい)
(覚えてられないくらい)
「まったく呆れる」
(言ってしまえばいい)
「だが、それも少し悔しい」
私は素直ではない。それ故に損をした事は多々あったし、これからも損をし続けるだろう。勿論、それを全て良しとするわけではないが、すぐに改善し難いのも事実だ。そして、素直ではないを通り越し、天の邪鬼となってしまっている私の心は素直に言うことを悔しいと感じている。よく考えれば、それが照れからくる感情であることに気付けるくらいには、成長をしているし、余裕もある。が、それを素直に認めるのが悔しい。
そして、そう考えることが少し楽しい。
昔の自分ではなかった思考だ。どこまでも深く深く自分の殻へ閉じこもることしか、改善策を見いだせなかった頃との違いを自覚すら出来る。変化を怖れ回避しようともがくことなく、喜びとして受け取ることができる。自分が多くのものに生かされてきて、感謝するには精一杯生きなければならないことを知った今、手を伸ばすことを恐れることすらなくなった。
………なんというか、昔と比較すれば随分と素直になったものだ。変わったと思っていはいたが、ここまで変化したことに驚きすら覚える。だが、こんなものではない筈だ。私はきっと、もっと――。
「そうだ。お前の力を借りるとしよう」
自分の手には納まりきれない輝きに向かって手を伸ばす。それは瞬いて応えた。
「そして、お前の力もな」
今は闇に染まっているそれは沈黙を守った。
「明日、もし晴天………いや、雲ひとつ浮かんでいない蒼空ならば」
つたえよう。全部、全部、全てを伝えてまおう、恋次に。
私の想いも、思考も、過去も、今も、未来も、心も、伝えて委ねて。
そして微笑もう。
雲一つない蒼空に背を押されて。
リコリスの実様が企画されている恋ルキお題企画『星に向かって吼えろ』へ参加させて頂くことになってます。
ぜろわんの担当お題が『蒼空に向けた、愛の言葉』。このSSは企画へ提出させて頂いたSSのオマケみないなものです。メインは企画のほうへ提出させて頂きました。皆様、是非企画のほうへ行ってみてくださいませ〜。