遠い
広い空。流るる雲。
――――――――――夏が遠い。
「なぁ、お前ルキアに甘すぎねぇ?」
ルキアのいない帰り道。年相応の学生服を着た一護がそんな事を言い出した。
「そうかぁ?」
ぐるんと最近の過去を片っ端から引っ張り出す。可能な限り自由な時間はルキアといると決めているため、俺の時間を占めるルキア率は高い。そして、そのルキアはコイツといる事が殆どだから、ルキアといる時間と一護といる時間はほぼイコールで結ばれる。
「そんな事ねぇだろ」
記憶の書庫にルキアを甘やかしすぎたという記録はなく。俺は、自覚なしかよ。と呆れたように呟く一護から視線を逸らす。そして今更だが、ルキアもいないのに何でこいつの隣を歩いてるんだ、と疑問をもった。ああ、そうだ。ルキアが一護と一緒に帰ってろと言ったからだ。
「アイツが行きたいって言った場所には必ず連れてって。食いたいって言ったものは必ず手にいれてくる。これが甘くねぇって言うのかよ?」
「甘いか?」
「甘ぇよ!めちゃくちゃ!!」
「あーーー…でも。俺、ルキアを甘やかしてやりてぇんだよなぁ」
どろどろに。
何も知らないルキアに教えてあげたい。望みは叶うのだと、願いは叶うのだと。何も言わないルキアに言わせてみたい。俺にどうして欲しいのか。罪しか持たないルキアにあげたい。俺の全部を。一人で立つルキアの傍にいたいし、それを許してほしい。願うならばその細い手を自身の幸せへと伸ばして。
ルキアにしてやりたい事を沢山ある。ルキアにして欲しい事はそれだけだ。どうか幸せに。だから一護にも幸せになってもらわなくては困る。
「なんだよ、それ」
「そのまんまの意味しかねぇよ」
ルキアが欲しいと思うのは当然だとしても、それへと一直線へは進めない。進むには多すぎるのだ。後悔と懺悔が。今の俺とルキアを繋いでいるのは祈りだけなのだとお互いわかっている。俺とルキアが互いに思うことは同じだ。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。どうか幸せに。
一度、闇に覆われた世界に簡単に光は差し込まない。だけどいずれは戻ってくるのだとまだ信じている。そして、それは現実となるまで続くのだろう。果てない時間の先に待つそれが酷く愛おしくて、大切で。手にした輝きの欠片がゆるやかに朽ちることのないよう護る事で手いっぱい。
「意味わかんね…」
「本当かよ?」
何だかんだと言うくせに最後には結局、俺と同じことをしているお前は違うのか。そう口には出さなかったけれど、渋面を作った一護はバツが悪そうにプイと顔を逸らした。その行動に、そうかと納得の声を心中で上げる。
俺も相当だが、手前は本当の馬鹿だな。一護。俺と比べても仕方がないだろうに。手前は知らないんだな。ルキアがどんだけ心配してるか、思ってるか。そして、どんだけ助けられてるのか。俺がいるからルキアが笑ってるのだとでも思ってやがんのか。餓鬼。
もちろん自分の力がまったく影響していないとは思わないけれど、自分だけの力だとは自惚れもしない。溜息を一つ。シッカリしろよ、そんなんじゃいつまで経っても離れらないだろうと思いつつ、愛しい女の心配の種に話を持ちかける。
「まぁ、そうだな。俺が甘ぇってんなら、その分は手前がしっかりしててくれよ」
その話にまだまだ青い少年は眉間の皺を深くさせながらも、器用に嫌味に笑って見せた。
「面倒な事は全部押し付ける気か、てめぇ…」
バキリと鳴らされた拳をかわし、よく分ってんじゃねぇかと褒めたたえる。その調子で是非とも成長してほしい。いや、成長してくれなくては困るのだ。あいつが――ルキアが納得するくらいに。ルキアが安心するくらいに。早く早く。もっと。
―――流れろ時間。
ルキアいねー(笑)
つぅことで恋次視点。大人なんだか子供なんだか分んなくなったね恋次、ごめん。そして二つ通してルキアと殆ど会話してないね一護、ごめん。
という事でこちらの一ルキ恋。リクエストを下さった匿名様へと、御迷惑と承知しつつ捧げたいと思います。ごめんなさい。