レーゾンテートル



「ルキア…」

見上げると愛しい男の唇が振ってくる。
それを全身で受け止めながら、私は私にとって一番、意味のある名を呼ぶのだ。いつだったか貴様は、私に馬鹿げた事を聞いたな。

「俺の事、本当に好きか?」

たわけ。本当の阿呆だ。
私が貴様以外の男を見つめたことがあったか?手を取ったことがあったか?唇に触れたことがあったか?体を重ねたことがあったか?

答えは否だ。

貴様以外の誰にも許したことはない。
この瞳は貴様の姿を追うため。耳は声を聞くため。口は名を呼ぶため。足は傍を離れないため。手はこの場所に繋ぎとめるため。肌は存在を確かめるため。

そのためにだけ存在している。

心臓ですら、ほら、貴様のために動いている。

だから、貴様も。

その瞳に私以外を映すな。私の声だけを聞いて、私の名だけ呼んで。早く私の元に掛けてきて、その腕に包み込んで、暖かさを感じさせて欲しい。

貴様の生きている音が聞きたい。
いつだって。

名を呼ぶと嬉しそうに笑う男の髪を梳いて、首に腕を絡める。
お返しとばかりに髪に、額に、瞼に、頬に、唇に。殆ど肌蹴てしまっている、着物を完全に上半身から脱がせて、左の胸に赤い花を散らす。

同じ印を自分の胸に受けながら、男の頭を抱え込んで、耳を甘く噛んだ。

落とす言葉は一つ。

私は、もう。
貴方なしでは生きてはいけない。





相手の名前を出さないでいこうチャレンジ第二段!第一弾は「握手」でした。
[18.1.29]