なちゅらる



目の前で昼食をとっている転校生について私が気付いた事が3つ。

1、男子に人気がある
これは確認するまでも無いかな。大きな瞳に、赤い唇、華奢な体に、細い手足。どれ一つとってもあのサイズではなくては駄目だと思わせる。それくらい危うくて、絶妙バランスを保つ美しい彼女。男子の注目を引いて当たり前ってもんよねぇ。圭吾の奴なんか転校当初からうるさいったらありゃしなかった。

2、私の幼馴染とよく話す
これはとても珍しいんだ。見た目と不器用な性格のせいで誤解を招きやすい一護の周りに、女っけは殆ど無い。だいたい怯えて近寄らないし、一護も積極的に誰かと仲良くしようとするタイプじゃないから、自然と周りに集まるメンバーは決まる。彼女もどちらかというと、交友関係に積極的ではないタイプに見える。話しかけられればにこやかに返答するけど、誰かに話しかけたりする所を殆ど見たことが無いし。
…なのに、なぜかあの二人は気がつくと一緒にいるんだよね。そして、これも不思議なんだけど、一緒にいることに違和感が無い。自然っていうの?彼女が転校してきてから一ヶ月ほどしか経ってないんだけど、ずいぶんと親しいみたい。

3、たまに誰かを見つめている
最初、それに気がついたときは一護を好きなのかと思った。それくらい熱心に目を逸らさずにあいつを見ていたから。その時はひやっとしたわ。なんせ、私の親友は一護なんかに恋心を持っているんだから。妙な所で内気な所がある織姫は、未だに一護とクラスメイトの域を超えるような関係になろうとしない。織姫はお世辞なしで、美人で、可愛くて、性格もいい。おまけに胸も大きい。…まぁ、天然な所はちょっとアレな時もあるけど、それも魅力といえなくもない。ぐっと迫れば落ちない男はいないだろうに。勿体ないと私は常々おもうわけよ。

それはともかく、親友の恋は応援してあげたい。勿体ないとは思うけれど、幼馴染にそんな素敵な彼女が出来る事は喜ばしい事だと思う。まぁ、そんなわけで私もついつい朽木さん観察なんかやってしまうわけで、織姫にライバルが現れたかとひやっとしたわけ。どうやら杞憂に終わったみたいだけど。

だって、ほら。あの時、一護を見てた時と同じくらいの熱心さで織姫の事を見てるし。今。
「ね、朽木さん。それ癖?」

食パン一斤を丸かじりしながら、楽しげに話している織姫を見つめていた瞳を、私の方へむけてキョトンとした顔をする朽木さん。そりゃそうだよね、質問が唐突すぎるんだから。

「あ、ごめん。えーっとね。さっきからずっと織姫を見てるでしょ。ちょっと気になっちゃって。前に一護や他のクラスメイトをね、同じように見てるの見かけたことがあるんだ。だから、人を見つめるの癖なのかなぁって」
「…私、そんなに見てました?」
「うん。自覚なし?すっごい熱心に見てたよ」

正面から見ると、ますます彼女の顔が整っているのがわかる。黒髪に黒い瞳だと思っていたけど、こうしてみると瞳は紫がかっていて、神秘的な印象を受ける。その深い色と相反するように白い肌は一点の曇りも無くて、同じ女としては羨ましい限り。ほんと、お人形みたい。

少し照れたように下に視線を落として、言うか言うまいか迷ったように瞳を動かした後、朽木さんは口を開いた。

「その…、癖というか………。あの…羨ましい。と、思ってたんですの」
「へ?羨ましい??」
「ええ。髪の色ですわ」
「なんで?」
「だって、黒崎君は明るくて綺麗な色をしているでしょう?井上さんは柔らかくて、暖かい綺麗な色。それに長くて、真っ直ぐなのも綺麗ですわ。それに比べて、私のはただ黒いだけ。短いし、おまけにくせっ毛で跳ねてしまいますの。恥ずかしいですわ。昔、知り合いに言われてなおしたつもりでいたんですけど」

本当に恥ずかしいらしく、ほんのり顔を染めて俯く朽木さん。女の私でも正直、かわいいと思ってしまう。普段の凛とした雰囲気に加えて、柔らかい空気まで持つなんて…。ちょっとずるいんじゃない?

「ふぅん。それって、私に対する嫌味?私の髪は朽木さんのより短いし、跳ねるんですけど?」

ほんの悪戯心で言ってみた。朽木さんもコンプレックスがあるなんて思いもよらなかったし、照れた姿にも親しみがわいたから。今も焦った顔をして私を見る朽木さんも同年代の女の子なんだと私を安心させる。彼女はよく大人びた表情をするから、ちょっと近寄り難い雰囲気があるんだ。

「そ…そんなつもりじゃ!ただ、綺麗なのが羨ましいなと思っただけで…。本当ですのよ?有沢さんと比べたわけじゃなかったんです。…それに」
「それに?」

普段の朽木さんとは違う表情が見られたのが少し嬉しくて、私は先を促してしまった。やめておけばよかったのに。

「それに」

そう言って私を正面から見た朽木さんに照れはもうなかった。驚くほど細い腕が私へ伸ばされる、その行き先へと視線を移そうとするが、私の瞳を捉えた紫水晶の双眸がそれを許さない。ひんやりとした指が私の髪を優しく撫でる。

ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐって、朽木さんの黒と、私の黒の境界線があやふやになった。

紫の光は未だに私を捉えたまま、指一本、瞬き一つすら許さない。
「ほら、有沢さんの黒は綺麗ですわ。私の黒とは違って、明るくて、元気な黒。髪型もとっても似合っていますもの」

赤い唇が言葉をかたどった後、ゆっくりと微笑んだ。
それはもう極上と言ってもいい、とても綺麗な微笑みだった。そこから目を逸らすなんて誰もできない。だって、綺麗過ぎる。

その証拠にさっきまでおしゃべりに忙しかった友達が全員黙ってこっちを見ていた。無関心代表の鈴まで。

前にクラスの男子が「朽木さんが笑った!」と大騒ぎしていた原因がわかった。その時はいつも笑ってるのに、何を今更。と馬鹿にしたけど。これなら…。

「ど…どうかしました?有沢さん。熱があるんですの??…皆さんも。私、何か変なことでも言ったでしょうか?」

一人、素に戻る朽木さん。
未だに固まったままの私たち。まはながボソリと言う。

「気付かなかったぁ…。朽木さんて、天然だったんだ」

目の前で、小首をかしげている転入生について、私が気付いたことが4つに増えた。

4、彼女は天然たらし
女にまで有効だなんて、マジ反則技だとおもうんだけどな。





これはルキアですよ?
[18.1.29]