涼
「あっっっちぃなぁ」
「そうだな…」
緑の海を超えた先に広がる深い森。草原と森の境目で涼を取る黒の衣装を纏った者が二人。どちらも体を木に預け、両足を投げ出しその身に恵まれる風を受けていた。
「だらしねぇぞ」
「お前こそ」
互いに軽口をたたき合ってみるが、どちらも佇まいを直すことない。ただただ穏やかに青い空を見上げ風を感じてその場に留まっていた。どれくらいの時間が流れたのだろう、数分かもしれないし数時間かもしれない。時の鐘が聞こえてこないこの場所ではそれは知りようもなく。またどうでもいい事だった。ただ有る事を見失わなければそれでいい。
「やっぱりお前は死神なんだな」
紅い髪の男が腕を持ち上げ黒髪の女の頬を指で辿った。
「何を今さら」
そう笑って小柄な女が大柄な男の髪を一房掴んで口づけた。
誰故に纏った黒衣だとお思いか。
今、身を浸す世界がこんなにも緩やかで穏やかなものだとは知らなかったころ。まるで道端の塵屑のよう共に消えていくのを良しと出来なかった時。相手のために自分のために選んだ道。例え二度とこの場が似合わないとしても何を悔やむことがあろう。
「お前のこの手もこの唇もこの瞳も今や死神を語っている」
「貴様のこの手もこの唇もこの髪を今や死神の匂いしかせぬ」
互いに互いを引きよせ口づける。
口づけることによってまるで何かが通じあうかと信じているかのように軽い口づけるだけの口づけを互いに繰り返す。儀式のように順番に髪に頬に耳に首に手に胸に、そして最後に唇に口づけてから再び二人は前と同じ位置に戻った。
ただし、今度は手をつないだまま。
「暑いな」
「そうかぁ?」
深い深い緑の中。
そこに染まらぬ人影が二つ。口うるさい空から身を隠し。昔のように何も聞こえず、何も見えない所でひっそりと身を寄せて。暫し憩いの時を。
ほんの少しだけ。
特に意味はないんデス。なんだか頭を空っぽにして恋ルキを書きたくなったそれだけ…。
多くを共有し、少し語る…みたいな。