「やめろ。その笑い方」

揺れる瞳で必死に目の前の男を睨む。
しかし、思ったよりも強い口調にはならず、その嘆願するような声はますます男の笑みをひろげた。

いつもの明るい笑いとも、何かを思いついた時の含み笑いとも違う。
私の前でしか見せない笑み。
口を少し開けて、咽で低く笑う。

私はこの笑い方が嫌いだ。

「何でだ?」
「ムカツクのだ」

その余裕な表情が。
嬉しそうな目が。
ムカツク。

「ちっ。かわいくねぇ奴」

口付けるために顔が寄せられると、流されたままの長く赤い髪が頬くすぐる。する時に私には目を閉じろと言うくせに、自分は絶対に閉じない赤い瞳を触れる瞬間まで見つめた。

「んっ」

初めは優しく。
一度、離してから深く。

易々と口内に侵入してきた熱い舌を必死で受け止めるようとするが、質量が違いすぎる。その上、激しくかき回されると私にはもうどうしようもない。 ただただ、恋次のいいように口付けられ、酸素を補給し、また口付けられる。その繰り返し。

何度も舌を絡めとられ、唇を吸われ、時に首に落される熱さに翻弄された後、二人の間を唾液がつたった。

「っはぁ。はっ。はっ」
「だいぶ美味くなったんじゃねーの?」

私は息が切れてるというのに、恋次は余裕の表情。
この差が憎らしい。

恋次に触れる時はドキドキする。触れられる時もドキドキする。顔を赤らめないようにするのと、恋次にドキドキしているのを悟られないようにするので必死だ。 余裕の表情なんてしていられない。

なのに。

コイツときたらどうだ。

「…何がだ?」
「何って」

また恋次が笑った。

「んんっ」
「―――。…やっぱり美味ぇ」

咽を鳴らす声が耳に触れる。
真っ直ぐコチラを見る瞳が嬉に染まる。
ああ、なんと厄介な笑い方だ。

「教えがいがあるぜ」
「たわけ」

一人だけ余裕の面して、楽しみおって。
こちらは苦しいし、熱いし、思考がぼんやりするし、いろいろ大変なのだぞ。
そんなに嬉しそうにするな。

「まだ足りぬ。貴様が満足するくらいに上達させてみせろ」

腕を組んで、下から睨みつける。
本当は立ち上がりたかったのだが、脚が未だにいう事をきかないので、それは断念した。

細い目が精一杯開かれて、驚きを引き出せたのが小気味いい。
長くは続かない優越感だと分かっていても。

「代金は高いぜ?ルキア」
「幼馴染のよしみで少しはまけろ」

ほら、また嬉しそうな目をする。
主導権は私が握っていたいのに、譲ってしまいそうになるではないか。
その余裕な。
嬉しそうな。
私にしか見せない笑みを見たいがために。

やっぱり、嫌いだ。






ふははは。
突発的にいちゃいちゃしたものがどーしても書きたくなりましたっ!
よかった!最後までいかなくて(オイ)
でも、多分、いつかやっちまうだろうな・・・。
[18.4.8]