territory
見つめれば誘われる。手を出せば牙を向く。放っておけば泣いている。
黒い猫。
寂しげな瞳が俺を呼んでいる気がしてならない。
まったく、どうかしてる。
珍しく手こずってる?まるで本気みたい?
冗談じゃない。
自慢だが、かなりの数の女を知ってる。
去るもの追わず、来るもの拒まずが楽しくやるコツ。
好いた惚れたは面倒だ。
跡腐れないく、綺麗に終れたらそれが最高だろ?
最低な男。遊び人。上等じゃねぇか。
いい人よりはよっぽどましだ。
一緒にいる間は全力で楽しませてやるよ。
ま、どれくらい続くかは気分次第だけどな。
「まさか惚れてるの?」
だから、冗談じゃねぇっての。
当たり前だろ。
心底、惚れてる。
やる事もなく、やる気もなく、檜佐木はボンヤリと窓から外を眺めていた。
日が柔らかに緑を照らし、風が優しく揺らしている。
「ふぁ〜。眠くなっちまうな」
長閑な光景を前に欠伸が漏れる。ここの所、忙しい日々が続いた。たまには、この緩やかな眠気に身を任せるのもいいかもしれないと、その瞳を閉じかけた時、見慣れた後ろ姿が目に入った。
小さな背。黒い肩までの髪。
ルキア。
その少女が紫の美しい瞳を持っていることを檜佐木は知っている。
それともう一人。ルキアと一緒にいる男。生意気にも檜佐木よりも高い背を持ち、赤い髪が何よりも目印になる後輩。
阿散井 恋次。
唯一、ルキアの隣にいる事を許されている存在。
「そこはダメです」
昨夜、赤い唇から放たれた言葉が響く。手の甲についた爪痕が思い出したようにチリリと肌を焦がした。
失敗したとは思わない。
むしろ早くああするべきだったと後悔している。
そうしておけば、ルキアだって檜佐木の前で暢気に眠るなどという愚かな真似はしなかったろう。
冷たく、サラサラと指を通る髪の感触を忘れてやらない。
指先で感じた白い肌の暖かさを覚え続けてやる。
触れることのなかった唇への渇望を枯らすようなことはしない。
「あー、意外と執念深いのな。俺」
出来れば目覚めて欲しくなかった感情を簡単に揺り起こしてくれた少女にはキッチリと責任を取ってもらう必要がある。代価など最初から決まっている。それ以外は認めない。
明日、彼女はどんな顔するだろうか。
優しい先輩から、ただの男になり下がった俺を見て。
怯える?蔑む?警戒する?
どれでもいい。檜佐木が立ちたいはその辺の奴らと同じような。代わりがきくような。そんな場所じゃあない。
ソコがいい。
片手を挙げルキアに別れを告げている恋次を見る。その笑顔にルキアも笑顔で答えている。そして、恋次はアッサリとルキアに背を向けると軽やかに駆け出した。
檜佐木が望む場所に立ちながら、その背を見つめるさびしげな瞳に気がつかない後輩を嘲った。
1111キリ番。
リクに叶っているでしょうか!?エミ様!!!
何か恋次が鈍くなってしまいましたが…。
受け取っていただければ幸いです。
[18.3.13]