舞台外
どれくらいの割合で自分を決められるのだろうか。そう、何度も何度も問いかけた。力を手に入れれば自由に決められると信じて刀を振るい。そう、叶った。と、容易く偽れるほどに月日を過ごした。自分を囲う壁が日に日に狭くなっているような圧迫感。対比し重なる囲いは自分を責めて追い立てる。
死と隣り合わせの貧しい生活。
不自由ない満たされた家。―どちらもソコに埋もれるしかなく。
蔑み憐憫の視線。
羨望や期待の言葉。―どちらも固定するものでしかなく。
力ない両の手から零れていく命。
力ある両の手で奪う命。―どちらも己を沈めるものでしかなかった。
嫌って、呪って、避け続け。うまく立ち回る彼を助ける者は誰もおらず。伸ばされる腕はすべて拘束するためでしかなく。押しつぶされる前に海の中へと逃げ込んだ彼に残されたのは、肺の中に残る僅かな酸素だけ。
「檜佐木殿!こちらにいらしたのですね」
木の下を覗き込むと長い髪をフワフワと風になびかせ、朽木がこちらにかけてくる。紫色のくるりとした瞳を吊り上げて、抗議に赤い唇が開いた。
「早く来てください。千秋楽なんですからっ」
「ああ。そんな時間か。悪い、悪い」
軽く音をたてて、地に朽木の前に降り立つ。長い髪に純白のドレス。この姿も今日で見納めなのが非常に残念だ。しかし、明日からは肩までの髪に死覇装。凛としたあの姿を再び見れるようになる期待がそれを上回る。
スと朽木のほうへ手を伸ばすと警戒して距離をとられた。
「ひでぇな」
「今は靴を履いてますから、抱きかかえて頂かなくても結構です」
ツンと背けられた顔に苦笑。最後くらい懐いて見せてくれてもいいのに。
「んじゃ。最後のシメと行くかー」
昼寝のダルさを取り払うために背伸びをすれば、風が狙ったように草の香を運ぶ。最初にこの服を着たときとは違った香りになっていた。一歩を踏み出すと、後ろの足音も踏み出す。すぐそこに建物が見える短い距離。理由をつけて遠回りしようにも、いい言葉が見つからない。残念だと呟く代わりに口笛を吹きたくなる衝動を胸にしまい。頭で軽く組んだ手を外し「ん」と後ろに伸ばすと小走りで近づいてきて、何も言わずに繋がれた小さな手にため息を付きたくなる衝動を笑顔に隠す。
閉じ込めて自分だけのものにするのもいいけれど。大勢の中から俺だけを選ばせるほうが数倍面白い。自分に縛り付ける目的ではなく、自分の腕に飛び込んでくるようにと願いをかけて、ヒョイと小さな体を抱きかかえた。可愛い口が文句を言う前にスピードをつけて、舞台へ近づく。
酸素を食らい尽くした後、再び囲いを求めた哀れな男へ。せめて銀の墓標を。