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今日はとてもいい天気で、今日はとてもいい日。

「美味いな」

目の前の白玉に瞳を輝かせ、満面の笑顔で頬張る君に言いたいことがあるんだ。何度も何度も言おうとしたけれど、声にならなかった言葉が。

だけど、今日なら言える気がする。
だって、甘味屋は程好い込み具合で普通の声の大きさなら他のやつに聞かれる心配はないし、隊舎から離れているからいつもの邪魔が入る事もないし、何より手にしている湯飲みの中には茶柱がある。

これは運が味方してくれていると思うんだ。
名を呼ばれ、面を上げると楽しそうな君。
ああ、その可愛い笑顔が何より

「好きだ」

手に変な汗をかく。
こちらを見つめる瞳が大きく瞬き、そして、花のように笑った。

「本当か?」
「ああ、嘘なもんか」
「ならば案内しよう」

どこへ。

「絶品だからな!驚くぞ。で、冬獅朗はいつがいい?」
「朽木?」
「話題の甘味屋に案内する日だ。遠いから休日がいいぞ」
「あ、あぁ。俺の次の休みは…」

どうやら、俺には殆ど意識できていなかった会話が偶然告白と繋がったらしい。その後、どうにか他愛のない話をして、「またな」と笑う朽木と一緒に甘味屋を出た。

いつもと同じように。

「…次の約束ができたから、いいか」




幾度かのまたを経て、僕は君に想いを告げる















ため息



例えば、目の前のいい香りのする黒髪とか、白い肌がむき出しになった華奢な肩だとか。

「ルキア」
「?何だ」

クルリと振り返ったその瞳に自分の姿を見ただけで、満足するちっぽけな自尊心とか。

「何でもねー」
「おかしな奴だな」

再び自分ではないものを移す瞳への失望感とか。男の部屋で、タンクトップに短パンという反則的な姿でくつろぐ奴への悪態とか。そんな見かけ美少女に欲情したり、そいつにたった一言が言えない自分に。

「はぁ」

再び振り返ったルキアが意気揚々と俺に告げる。瞳を輝かせる幼い表情すらもかわいいと思う自分は重症だと思う。

「一護。ため息をつくと幸せが逃げるぞ」

とりあえず、くだらない知識を自慢げに疲労する死神に愛の言葉代わりにデコピンをくれてやる。

「いんだよ。ため息も幸せのうちだからな」




ため息が枯れるくらい君を思わせて















本気



暗い書庫の一角。仄かに点る明かりを頼りに捲られる、資料の音だけが規則的に壁に刻まれていた。

「好きだ」

顔に影を落していた長い睫をゆっくりと持ち上げると、紫色に輝く瞳で、ルキアはいつも唐突に訪れる6と9の刺青が彫られた顔を見た。

そして、しばらく考えた後にニッコリと笑って。

「ありがとうございます」

とだけ答えた。

「何考えた?」
「この茶番を早く終らせる方法を」

いつものように冷たくあしらわれたら更なる告白を。本気にとってくれたならば口説き文句。断られても、やっぱり口説き文句。では、礼の言葉へは?

なるほど。早いな。と檜佐木は咽の奥で笑う。

「ひでぇな。嬉しくないか?」
「いえ、嬉しいですよ?それなりに。檜佐木殿は面食いという話ですから」
「本気だとは思わないのか?」
「その台詞が最初に出てくるまでは」

再び、室内に静寂が戻る。檜佐木はじっとルキアを見つめた。

同じ黒のはずなのに、日に焼けた自分のとは違う濡れた様に艶やかな髪。白磁の肌は、薄ぐらいこの室内ではますます白く浮き上がり、何も塗られていないはずの赤い唇がその色を主張する。細い腕はとても頼りなさげなのに、斬魄刀を振るう時のしなやかな動きは紛れも無く力を持っている。

白と黒。赤と白。静と動。はかなさと力。
相容れない物が同居する、小さな、小さな、そして綺麗な女。

「やっぱり、欲しいな」

その声は誰に届くことも無く、仄かな明かりと共に消えた。




ねぇ。君はどうやったら本気だとわかってくれる?















これから



ルキアが好きで。
昔から、ずっとずっとルキアが好きで。
ルキアしか見えていなくて。
つまらない嫉妬から、その体を抱いて。
ルキアがそれを拒まなくて。
それを繰り返す。

顔にかかっていた髪を除いてやると、長い睫が震える。

「ん…」
「悪い。起こしちまったか?」
「いや、かまわぬ。…美しい月だな」

月光に浮かぶルキアの顔がとても綺麗に見えた。
小さな体が熱を持って、確かに鼓動している。
ああ、その温もりを感じられることはなんと幸せなのだろうか。

「ルキア」
「ん?」
「好きだ」
「………!?」

急に体が冷たい空気に晒される。その冷たさに耐えかねて、体を離したルキアを再び抱き寄せる。

「好きだ。好きだぜ、ルキア。ずっと前から、今も、これから先も好きだ」
「きゅ…急になんなのだ!」
「急じゃねぇよ。ずっとそう思ってた」
「今まで何も言わなかったのではないか!」
「…そうだったか?」
「とぼけるな、たわけ!!」
「わりぃ。でも、好きだから。許せよ」
「ず…ずるいぞっ!」

真っ赤な顔で、怒っているのか、泣いているのか、笑っているのか…。複雑な表情。初めに言っていれば、あの顔を見せてくれただろうか。

「ルキア。愛してる」

次は文句なしの笑顔を見せて欲しい。




これから先、君が聞き飽きるほど囁くから















ROOM



「だから、ここはこうなるんだ」
「あぁ、なるほど。さすがだな、阿近」
「アホ。これで食ってんだ。わからないわかけがない」
「…貴様はいつも一言よけいだな」

ルキアは開いていたノートを閉じ、手際よく手提へと仕舞う。最後に筆記用具を仕舞おうとした所で、突然、阿近に手提を取り上げられた。

バサッ。ドサッ。ころころころころ。からん。

「ああ!何をするんだ、貴様!!」

阿近によってひっくり返された手提の中身は、景気良く机の上へとぶちまけられた。
慌てて中身をかき集めようとすると、腕を掴まれ止められる。

「片付けなくていい」
「はぁ?何をわけのわからない事を言っている。貴様も早く拾え」
「片付けると帰るだろう」
「当たり前だ」
「帰るな」
「何故だ」

打てば響くように返ってくる饒舌な男にしては異様な間。だいたいが無表情か、人を馬鹿にしたような薄ら笑いしか浮かべない顔に浮かんだ困惑の表情を、珍しいものを見たと言わんばかりにルキアは阿近を繁々と見つめる。

「何故って…。わからないのか?」
「わからないから聞いておる」
「好きだから」
「…え」

紫色の瞳に映った困惑の色にチクリと胸が痛んだ。
まったく、人の顔色を伺うなど自分らしくないにも程がある。

「間抜けな顔だ」
「っ!!またからかったのだな!?」

赤い顔。見慣れた表情。そう、さっさと怒れ。

「どこへ行くんだ?」
「不愉快だ!帰る!!」

そうだ。どこへなりとも消えてしまえ。

「荷物は?」
「〜〜〜〜〜っ。さっさと寄越せ!」

バタンと扉が閉じられると、そこは阿近の空間へと戻った。
誰からも干渉されない、時間すらも拒むかのような、完成された空間。
唯一の歪みは阿近の手の中に残された、小さな袋。

「馬鹿な奴。明日、必要だと言っていたのに」

明日、悔しそうにこの部屋に尋ねてくる者を思って、阿近は微笑んだ。




要らないのに、欲しい。















ららら



「ルキアさーん!」

そう声を掛けると振り向く小さな背。
大きな瞳で一つ瞬きをすると、やわらかに微笑む。
その可愛らしさはまるで春の花のよう。

「どうした?花太郎」
「ルキアさんっ!これを見て下さい」

紫の瞳の前に一輪の花を差し出す。

「桔梗?」

もう一度瞬きをした瞳がその花を映した。
紫色でも紫色を映すのだと、妙なところで感激する。

「はい!今朝、育てていたのが咲いたんです。それで、あの…ルキアさんに差し上げたくて」
「私に?」

花を映していた瞳に自分の顔が映った。
その瞳に入った喜びと、そこに映される己の姿への羞恥。

あぁ、そんな風に僕を見ないでください。
でも、もっと見ていてください。

「綺麗な紫でしょう?」

貴女の瞳のように。

「ふふ。自画自賛か?」
「あ!そ…そんなつもりじゃ」
「冗談だ。ありがとう、花太郎。大事にする」

いたずらっ子のように幼く笑う。先ほどの微笑みとも牢獄で見せた冬の淡雪のような笑顔とは違って、今度は夏の木陰みたいだ。

桔梗によく似合う。

「綺麗だな」

ええ。とっても綺麗ですよ。

「こんなに綺麗に育てられるとはな。花太郎はよほど好きなのだな」

はい。大好きです。
貴女に笑顔を与えられるものを嫌うなんて、できるはずがないでしょう。

「良かったら、また持ってきます。受け取ってくださいますか?」
「もちろんだ。このような素敵な贈り物、返せといわれても返さぬよ」
「わぁ、本当ですか?それなら、今度は両手いっぱい持ってきますから!」




貴女を彩るすべてに祝福を